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照思会のお知らせ

2012/08/23
「憧れのピサの斜塔」: 元教員 谷 準一

「憧れのピサの斜塔」

元教員 谷 準一

 

 2012年4月14日(土)イタリアツァー5日目の午後、フェレンツェから約100km走って西のピサへ入った。
バスがピサの町に入ると間もなく斜塔が見え隠れし、期待も高まる。
以前はすぐ近くまで車を寄せられたが今は800メートル離れた駐車場まで、そこからは歩くかシャトルバス。

 この日はあいにくの雨、迷わずバスに乗る、満員の車内。

 バスを降り、傘を傾けながら城壁にそって少し歩く。サンタマリア門をくぐるとパッと視界が開き、緑の広場と教会そして真っ白な斜塔が目に飛び込んできた。

 『斜塔だ』、これぞ私の憧れのピサの斜塔だ。思わず叫びそうになった。
傾いている、確かに傾いている。
それもかなり、しばし見とれていた。
それにしてもすごい観光客の数、えらい人気だ。
ガイドが先ほどから声を嗄らして呼んでいる、追いつかなければと足を速めた。
 
 城壁の中はカンボ・ディ・ミラコーリ(奇跡の広場・塔が倒れない奇跡)と呼ばれる平地(最近はドゥオーモ広場と呼ばれている)で洗礼堂・ドゥオーモ・斜塔と続き、土産物屋が並ぶ通りと通路以外は立ち入り禁止の芝生に覆われている。

 斜塔へ登る予約時間に間があるのでドゥオーモに入る。入場料2ユーロ。
フェレンツェでは無料、でも雨の中25分の待ち時間が・・・!
因みに、「ドゥオーモ」(Duomo)とはイタリア語で、その町を代表する教会堂。入る時の挨拶は「どうもどうも」。

 ピサのドゥオーモの中はなかなか豪華である。私の関心は「ガリレオのランプ」である。ガリレオ・ガリレイは1583年ピサ大学在学中に、このランプが揺れるのを観察して「振り子の等時性」(単振り子の触れる角度が小さい時、周期は振幅によらない)を発見した。ガリレオの最初の業績であるが、ガリレオの偉大さの一端でもある。

 いよいよピサの斜塔に登る。一回の定員は40人。時間は30分。バックなどの荷物の持ち込みは禁止なので、添乗員に預け、カメラと傘のみを持って入場した。通路は螺旋階段で大変狭く、一人が通れるだけ。階段を登っていても、塔の傾斜が実感できる。体が左右に揺れるのだ。石の階段の踏み面に出来た凹みがあきらかに中央から右へ左へと変化している。その凹みを雨水が流れ落ちて、しかも滑る、最悪の状態だ。
 
 5階あたりで下りの人を通す為にいったん階段の外の廊下に出る。ほっと一息ついての外の眺めは最高。

 7階ぐらいからは傘をさしての登り、最上階の8階には鐘が何個か(ガイド本では7個)あった。

 斜塔はもともと教会堂の鐘楼(現在は鳴らしていない)塔の内部は空洞で下まで覗ける。

 この斜塔は南へ傾いているそうだが、8階の回廊の南端と思しき所から低い手すり越しに下を望んだ。緑の芝生が真下に見えた。ガリレオがこの塔で実験をしたのならここから落としたに違いない。

 私は物理の授業で、ガリレオの「落下の法則」(空気の影響がなければ、物体はすべて同じ落ち方をする。1604年)が出てきたとき、こう説明した。

 塔が傾いていることもあって、ここから物体を落とすなら、途中何にも引っかからないで着地できる。

 8階から屋上に上がる通路はさらに狭く傘をすぼめてやっとだ。

 屋上には屋根もなく、高さ1mほどのフェンスがあるのみ。最大の傾きと素晴らしい眺望を、強い風と雨の中で堪能していると、『降りろー』(たぶん)の非情の声。下りも足元が滑りやすくて大変だった。

 イタリア旅行は沢山あるようだが、ピサの斜塔に登るツァーは少ないらしくて、私の切なる願いを叶えるために愛妻にやっと探してもらった、たった一つのツァーだった。
ガイド本によると斜塔の入場料は15ユーロ、シャトルバス片道1ユーロ、トイレ30セント。

ピサは11世紀~13世紀には世界最強の海軍都市だったというから驚きである。町を流れるアルノ川が海岸線を10kmも遠ざけた。

 ピサは当時、世界一の裕福都市だったとかで洗礼塔、ドゥオーモ、鐘楼(斜塔)等ピサ・ロマネスク様式の最高傑作を財力にまかせて作った。ドゥオーモの色の異なる柱は当時海軍があちこちから集めてきたらしい。

斜塔は、1173年に建築が始まったがすぐにも傾き始め、紆余曲折を経て200年後の1372年に完成。補復を繰り返しているので、よく見ると塔は少し反ってバナナ状になっている。その後も傾き続けたので、1990年から10年かけて修復された。

 傾斜の原因は、地盤の土質の不均等さ。塔も重たい。この最後の修復工事は大掛かりなもので、傾きを1.5度も戻し、地盤を固めた。外装もきれいにされて、2011年6月より現在の公開スタイルになった。今後300年間倒壊の危険はないとのことである。ちなみに、洗礼堂もやや傾斜しています。

 ドゥオーモ広場全体が世界遺産に登録されています。

 ピサの斜塔の高さは56m、階段数は294段、傾斜角は4°、重量は1万4千トン。

 これらの数字が資料によって少しずつ異なるのでややこしい。ガイドに資すると『イタリアは細かい数字にはこだわらない国民性なの』とのことであった。

 ガリレオの斜塔での落下実験についても諸説ある。低学年向きの伝記などでは、肯定的に書かれているが、一般書では記録はあるが随分少ない。

 授業でピサの斜塔に登ってくると言い続けてきたが、やっと実現しました。

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